CFOの視点: 戦略的インテリジェンス
変革の推進者としてのCFO

CFOの視点: 戦略的インテリジェンス

変革の推進者としてのCFO



このレポートをブックマークする

安定性と変革の守護神

劇的な変化にさらされると、人は確実性を求める。このような場合、企業において長年にわたり頼りにされてきたのは、安定性や財務健全性、高い順法精神を備えた存在、つまり最高財務責任者(CFO)である。

CFOは、詳細な情報と現実に即して、冷静かつ大局的見地に立って、その役割を果たすことが求められる。常に確実に成果を上げることが期待され、秘策をいっぱい詰め込んだツールボックスのような存在でなくてはならない。なぜなら、確実な成果こそが、この激動の時代に経営層が求めるものだからである。

IBMのInstitute for Business Value(IBV)では、2021年に28業界、43拠点で経営層の財務リーダー2000名を対象に調査を行った。特定の経営層には詳細な定性的インタビューを行い、経理財務部門のリーダーとして現場で得た知見について語ってもらった。

CFOの視点: 戦略的インテリジェンス
変革の推進者としてのCFO


このレポートをブックマークする

安定性と変革の守護神

劇的な変化にさらされると、人は確実性を求める。このような場合、企業において長年にわたり頼りにされてきたのは、安定性や財務健全性、高い順法精神を備えた存在、つまり最高財務責任者(CFO)である。

CFOは、詳細な情報と現実に即して、冷静かつ大局的見地に立って、その役割を果たすことが求められる。常に確実に成果を上げることが期待され、秘策をいっぱい詰め込んだツールボックスのような存在でなくてはならない。なぜなら、確実な成果こそが、この激動の時代に経営層が求めるものだからである。

IBMのInstitute for Business Value(IBV)では、2021年に28業界、43拠点で経営層の財務リーダー2000名を対象に調査を行った。特定の経営層には詳細な定性的インタビューを行い、経理財務部門のリーダーとして現場で得た知見について語ってもらった。

CFOの視点: 戦略的インテリジェンス
変革の推進者としてのCFO

「CFOの責務の範囲が広がってきている」

— 日東電工株式会社 取締役 常務執行役員 CFO 経理財務本部長 伊勢山恭弘氏

新しい革新的な方法で価値を推進

テクノロジーが高度化した現在の経営環境においては、組織のアジリティーと変革能力が重要視される。当初は数週間、あるいは数カ月と予想されていた新型コロナウイルス感染症が世界にもたらした混乱はいまだ終わりが見えず、アジリティーと変革能力の重要性はますます高まるばかりである。ここで頼りになる存在として、再び脚光を浴びたのがCFOである。最高経営責任者(CEO)や取締役会、さらには投資家までもが、どの役職メンバーよりもCFOにアドバイスや洞察を求め、アクションを期待している。IBVが実施した最新のCEOスタディによると、CEOが考える今後2~3年で最も重要な役職はCFOだった。

安定性の守護神でありながら変革の推進者として、CFOと経理財務部門に対する期待はかつてないほど高まり、彼らが力を発揮する機会の場は広がっている。この相反する責務に取り組み、組織全体に価値をもたらすためには、CFOと経理財務部門の潜在能力を最大限引き出さなくてはならない。そのためには、新しいアプローチ、ツール、視点、組織構造、スキル(特にデータに関する)、そしてこれらを使いこなすための訓練が必要になる。

世界のCFOから得た 鍵となる洞察を探る

01

規律のある推進

企業戦略におけるCFOの役割が、最近あらためて注目されている状況と、積極的な見直しが求められる理由を探る

読む

02

不確実性への適応

CFOの4つのタイプと、不確実性に直面した際にどのように振る舞ったかを探る

読む

03

影響力の拡大

組織が効率的かつ効果的に成果を上げるために重要な5つの要素を探る

読む
01規律のある推進

CEOとCFO - 異なる視点を持つことの価値

両者の違いは、組織が野心、能力、規律を最適化するのにどのように役立つか。

詳しく

CFOの果たすべき役割


不確実性に満ちた2020年は終焉を迎え、未来は今まで以上に不透明ではあるが、新たなリスクとともに新たな機会も見え始めてきた。このような環境で企業が成功を収めるためには、目的を持ちアジリティーを高めつつイノベーションを進め、最適なタイプのプラットフォームとエコシステムを取り込まなければならない。そうした中でCFOには、戦略的なかじ取りやリーダーシップ、洞察力が求められる。

しかし事業戦略や企業価値を形作る要素は、組織の内外でも変化している。新規分野への投資、あるいは既存プロジェクトを再検証するとき、将来を予測することは極めて困難ではあるが、常に迅速な判断が求められる。

パンデミックの発生は、CFOの果たす役割が、かつてないほど重要になっている事実を浮き彫りにした。IBVの CEOスタディ2021によると、今後2〜3年の間で最も重要な役割を期待する経営層の役職としてCEOが挙げたのは、CFOとCOO(最高執行責任者)であった。CFOも自らの役職の重要度は認識しており、COOを1位に、CFO自身を2位に選んでいる。

CEOとCFOは、組織の最優先課題についての見解も一致している。いずれも1位に挙げたのは「効率の改善と顧客体験の向上」で、僅差の2位に「ビジネスモデルのイノベーション強化」を挙げている。これらの項目は、CFOが自社の経理財務部門が最も効果的に行うことができた領域として挙げた項目とよく一致している。それは「企業のコスト削減機会の特定」、「企業リスクの管理」、「自律的な事業拡大(organic growth)の機会の評価」、「価格設定の最適化」、「戦略/ビジネスモデルの変化への対応」である。

  • パンデミックの発生は、CFOの果たす役割が、かつてないほど重要になっている事実を浮き彫りにした。IBVの CEOスタディ2021によると、今後2〜3年の間で最も重要な役割を期待する経営層の役職としてCEOが挙げたのは、CFOとCOO(最高執行責任者)であった。CFOも自らの役職の重要度は認識しており、COOを1位に、CFO自身を2位に選んでいる。

    CEOとCFOは、組織の最優先課題についての見解も一致している。いずれも1位に挙げたのは「効率の改善と顧客体験の向上」で、僅差の2位に「ビジネスモデルのイノベーション強化」を挙げている。これらの項目は、CFOが自社の経理財務部門が最も効果的に行うことができた領域として挙げた項目とよく一致している。それは「企業のコスト削減機会の特定」、「企業リスクの管理」、「自律的な事業拡大(organic growth)の機会の評価」、「価格設定の最適化」、「戦略/ビジネスモデルの変化への対応」である。

  • CFOがニュースの見出しに出るような事態は、普通は好ましいことではない。経理財務部門がめったに注目されないのは至極当然のことである。実際に、仕事のできるCFOは、戦略を立て、規律を徹底する、縁の下の力持ちなのである。ところが縁の下の存在は、時に軽視されがちである。

    南アフリカStandard Bank Group社のエンジニアリング担当CVO(Chief Value Officer)兼テクノロジー・デジタル・イノベーション担当CFOを務めるSean Berrington氏は次のように語る。「当社の経理財務部門は、以前は監査人的な立場だったが、次第に各部署のリーダーたちと連携して戦略目標を立案・普及・実現するバリュー・アドバイザー的な立場に変わってきた。帳簿付けに追われる日々から、事業運営の先頭に立つ存在に変わり、かなり困難な役割となった。」

    本スタディに参加したCFOは、経理財務部門は戦略をもって効果的に企業を支えなければならないと考えている。ブラジル銀行のCFO、José Ricardo Fagonde Forni氏は「難しいのは、ROIのような伝統的指標と、市場モデルを反映させた新しい指標をバランスよく見なくてはならないことだ」と述べている。

    CFOが挙げた上位4つの、規律ある革新者としての活動:

    • 不採算プロジェクトから将来性のあるプロジェクトへの資本の再配分
    • 重要プロセスのパフォーマンス評価
    • ギャップ解消のための具体的なアクションの提案
    • シナリオ・成果・企業戦略への影響のモデル化

    戦略立案・実行における経理財務部
    門の有効性は
    2013年から2021年にかけて、

    25%低下した
  • IBVの最新レポート「デジタル・トランスフォーメーション(DX)の加速」によると、企業は優先課題に取り組み、最適な戦略的意思決定を下すために、変革の必要性と可能性を認識している。実際、経営層の60%は、企業のDXを加速させ、ビジネスの刷新と改善を目指している。

    CFOは、企業のDXに影響力を行使できる特異な立場に立つ。具体的には、財務計画の設定、ビジネス・ケースの作成、それぞれの施策の価値評価、利益達成の追跡的な調査などを行う。企業全体のトランスフォーメーションにおいて、自らが重要な役割を果たしていると回答したCFOは、調査回答者の4分の3近くに上った。

    特に驚くべきことではないが、CFOは企業のDXにおける自らの最重要責務は、予算管理と資金調達という財務関連の仕事であると認識している。ところが実際は、CFOの責任範囲は予算と財務の枠にとどまらない。10人中4人のCFOが、あらゆる業務をデジタル化するという企業文化の醸成を任されていると回答している。

    ケーススタディ:Volkswagen Sachsen社

    Volkswagen Groupの関連会社であるVolkswagen Sachsen社は、自社のサステナブルな製造工程をこれまで以上に最適化することを検討していた。そのために同社は、環境に配慮したeモビリティーに移行する必要があり、最新かつ詳細な情報を求めていた。そこで経理財務部門に、効率性の改善と環境負荷を最小化するための、より詳細な製造分析を出すように命じた。

    これらの目標を達成するため、Volkswagen Sachsen社はERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)システムを基盤とする、標準化された経理財務プロセスを導入した。このアップグレードにより、意思決定の効率が20%改善された。さらにサステナブル・ジャーニーの実現*に向け、より深い洞察を得たり、受注業務を50%削減したりすることで生じた余剰労力を、事業開拓など付加価値の高い業務に振り向けたりできるようになった。

02不確実性への適応

ビジネスパートナーとして不可欠な存在


CFOが時代の要請や企業全体からの期待に応えるためには、経理財務部門が組織にとって必要不可欠なパートナーになる必要がある。それは組織全体の効果的な意思決定を支援することである。

しかし経理財務担当者の時間の半分近くは、依然として帳簿作業に費やされている。これは18年にわたる調査を通して一貫した傾向である。意思決定を支援するための分析や実務に割り当てられた時間は、全体の10%にも満たない。戦略的な課題に取り組む時間を確保することが、財務部門の課題である。特に支払いや決算といった従来の業務を自動するのに必須なツールやシステムを持たない場合、事態はさらに深刻になる。

次の4つの側面に注目し、効果的な意思決定におけるCFOの進捗状況を評価した:

  • 効率性—課題に応じた適切な労力を投じているか
  • スピード—競合他社よりも早く決断しているか
  • 実行力—意思決定を具体的な行動に転換しているか
  • 正確性—意思決定を適切な成果につなげているか

そして、経理財務部門を4つのCFOタイプに類型化した:

  • 調査対象の15%を占める
  • 意思決定上の4つの側面がすべて高評価
  • 財務パフォーマンスと意思決定支援で効果を上げている
    • 調査対象の15%を占める
    • 意思決定上の4つの側面がすべて高評価
    • 財務パフォーマンスと意思決定支援で効果を上げている
    • 調査対象の35%を占める
    • 意思決定の場に応じて、適切な労力を投じることに長けている
    • 迅速な意思決定は苦手で、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年、収益成長率が落ち込んだ
    • 調査対象の20%を占める
    • 意思決定内容をアクションに転ずることが得意
    • アクションを起こす姿勢が2020年には功を奏し、収益成長率が伸長した
    • 調査対象の29%を占める
    • 4つの側面のすべてで低評価
    • 効率と効果の両面で、満足な成果を上げられていない
03影響力の拡大

意思決定の促進


以下の5つのファクターに焦点を当てることで、経理財務部門は影響力を劇的に拡大し、効率的かつ効果的な成果を上げられるようになるだろう。ただし、CFOはこのうち1つまたは2つではなく、5つのすべてに対応しなければならない。IBVの調査データによると、これらのファクターをうまく活用できているCFOは、次のことを体現できる。

収益に対する財務コストの割合を

8%低減

戦略と実行の効果を

3から4倍に拡大

CFOと経理財務部門は、企業の戦略に有効な手段を提供し、規律を強化する。この方法には「新しいテクノロジーやアドバンスト・アナリティクスを実装する」、「エコシステムとオープン・イノベーションを活用して、新たなビジネスモデルを推進する」「経営層やパートナーとのコラボレーションにより指標や手法を開発し、進捗状況に合わせて適応する」などがある。

CFOが成功を収めるためには、企業戦略の策定と実行に焦点を定めなければならない。そのために必要なのが、経営層のメンバーからの協力を得ることと、AIによって特定された重要業績評価指標(KPI)である。CFOはDXの取り組みを実際に推進する責任者や共同責任者になってはならない。

CFOが最良の結果を出すためには、意思決定の過程とそれをアクションに転換する際、支援に徹しなければならない。つまり、トランスフォーメーションの当事者になるのではなく、あくまで影響を及ぼす立場にとどまる必要がある。

IBVのデータは、有効性のばらつきが、各意思決定支援領域におけるAIの導入水準の高さと関連していることを強く示唆している。自律的な事業拡大の機会評価にAIを導入している「戦略的アドバイザー」の割合は、次点の「慎重な決定者」よりも30%も多かった。

各意思決定支援領域で財務部門が発揮する効果
意思決定支援の効果が、戦略方針の策定、収益拡大、リスク管理に役立つ
  • CFOと経理財務部門は、企業の戦略に有効な手段を提供し、規律を強化する。この方法には「新しいテクノロジーやアドバンスト・アナリティクスを実装する」、「エコシステムとオープン・イノベーションを活用して、新たなビジネスモデルを推進する」「経営層やパートナーとのコラボレーションにより指標や手法を開発し、進捗状況に合わせて適応する」などがある。

    CFOが成功を収めるためには、企業戦略の策定と実行に焦点を定めなければならない。そのために必要なのが、経営層のメンバーからの協力を得ることと、AIによって特定された重要業績評価指標(KPI)である。CFOはDXの取り組みを実際に推進する責任者や共同責任者になってはならない。

    CFOが最良の結果を出すためには、意思決定の過程とそれをアクションに転換する際、支援に徹しなければならない。つまり、トランスフォーメーションの当事者になるのではなく、あくまで影響を及ぼす立場にとどまる必要がある。

    IBVのデータは、有効性のばらつきが、各意思決定支援領域におけるAIの導入水準の高さと関連していることを強く示唆している。自律的な事業拡大の機会評価にAIを導入している「戦略的アドバイザー」の割合は、次点の「慎重な決定者」よりも30%も多かった。

    各意思決定支援領域で財務部門が発揮する効果
    意思決定支援の効果が、戦略方針の策定、収益拡大、リスク管理に役立つ
  • 財務部門は、組織のアジリティーを高めることで、リソースの管理、意思決定のためのガバナンスの提供、パフォーマンスの管理を通して、真の意味で安定と変革の守護神になることができる。それは、よりフラットかつ迅速、そして柔軟な組織構造と意思決定の説明責任、そして規模の経済性により実現される。

    Banco de BrasilのCFO、Fagonde Forni氏は、「従来のサイロ化から脱却し、もっとコラボレーションを取りながら働けるアジャイルな環境に組織を変えなくてはならない。より迅速にリソースを配分して、業務を加速させる必要がある」と述べている。

    アジャイル手法を特定の経理財務領域に導入すれば、意思決定の明確性とスピードを向上できる。例えば、より多くの業務の自動化が可能になり、人頼みの仕事を減らせることで、その分の時間を分析やアクションに割り当てることができるようになる。

    Standard Bank GroupのCFOであるBerrington氏は、「当行では月末の経理業務をアジャイル化し、計画と分析に特化するチームを編成した。毎日を月末と考え、複雑なものを簡素化して、より付加価値の高い活動に労力を割り振っている」と述べている。

    Finance effectiveness in decision support areas
  • データへのアクセスを、さらにはデータの統合・評価を容易にすることで、価値を生む領域とその方法が明確になり、意思決定のスピードはアップする。経理財務部門のIT化とデータ機能の最新化は、このような目的の達成を可能にする。クラウド・コアERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)は、データのリモート・アクセスや大量のデータ保存を可能にする。財務担当者がITやデータを使いこなせるようになると、データ可視化ツールでデータを精査し、情報をスピーディーに処理し、洞察を活用してパフォーマンスを向上させられるようになる。

    データを標準化することで、あらゆる角度からデータを可視化し、大規模なデータ・セットに対して非常に簡単にAIを適用できるようになる。財務部門は、データの信憑性の判断に時間を費やすことなく、データをそのまま使用して意思決定を行えるようになる。

    導入の対象分野
    データへのアクセスを、さらにはデータの統合・評価を容易にする
  • 経理財務部門が的確に意思決定を行う鍵は、人財にある。経営層がアジリティーに焦点を当てたスキルに投資してきたことはすでに紹介しているが、そうした人財の育成にも取り組み始めている。継続的に従業員のパフォーマンスを評価し、よい成績を上げた者には報奨で報いる。またAIを活用して、次のリーダーとなる人財を育成し、パーソナライズされた研修を実施している。

    特に経理財務部門のメンバーにおいては、変化し続ける目標や優先事項、実践方法により強く関与してもらわなければならない。経理財務変革の明確な戦略を提示しておけば、それは従業員にとって将来を見つめる青写真となる。この戦略には、プロセスのインテリジェント化を支援するデジタル技術への投資や、データからの価値の抽出、ビジネス・パートナーとの関係強化などが含まれる。

    財務部門の変革や、人と機械の棲み分け、さらには働き方が、将来どうなっていくかを明確にした変革管理(チェンジ・マネジメント)が必要となる。従業員から支持を得るために、変革の取り組みに対する従業員からの意見をくみ上げるべきだ。「戦略的アドバイザー」と「アクション設計者」は、こうした取り組みが他のタイプよりも進んでいる。

    こうしたことの背景には、データ管理や、サイバー・セキュリティー、機械学習、RPAなどの発展著しい分野のスキルを、今後のために育成したいという意図がある。データの有用性を高めるためのキュレーションや統計技術に「戦略的アドバイザー」の3分の2が投資している。「限定的な関与者」では、これほどの投資はできていない。これはデータの標準化が進んでいないためだと思われる。データの質が低ければ、分析スキルを育成してもほとんど意味をなさない。

    適切な分野への投資が、質の高い意思決定とその
  • インテリジェント・ワークフローは、新たな価値を創造し、新しいプロセスをスムーズに運用する。インテリジェント・ワークフローへ投資し、それを適切に構築できれば、優れた意思決定が行えるようになる。インテリジェント・ワークフローには、プロセス・マイニングやアドバンスト・アナリティクス、そして当然ながらAIが含まれている。これらすべてがリアルタイムの監視やレポート作成の向上を可能にし、適切な意思決定をより迅速にリアルタイムで行えるようにする。

    実際に「戦略的アドバイザー」の60%が、「慎重な決定者」では53%が、業績指標を標準化してリアルタイムで追跡している。ところが同じことを行う割合が、「アクション設計者」では全体の3分の1程度、「限定的な関与者」では4分の1程度しかいなかった。こうした企業の最新の取り組みを理解することで、企業の戦略実行の進捗状況や、供給・需要・材料・製品の変化が見えてくる。

    ベンチマークを設定すると、財務やオペレーション上のパフォーマンス・ギャップを特定でき、それに対する調整を迅速に行えるようになる。「慎重な決定者」の場合、リアルタイム・データを持っているのだが、迅速な意思決定が苦手なため、活用できていない。これとは対照的に「アクション設計者」では、リアルタイム・データがない場合も、意思決定とアクションを即座に行えている。

    インテリジェント・ワークフローで意思決定力を高めることで記録から分析までの日数を

    8日短縮
    「私たちの目標は、財務報告書の作成を完全に自動化し、事業支援やアドバイス業務に集中できるようになることだ」Alviva Holdings CFO Richard Lyon氏
「企業価値の向上に向けて、事業の方向性が正しいかを確認していくことがCFOとして担う大きな役割と考えている。」
— キオクシア株式会社 専務執行役員 財務統括責任者 花澤秀樹氏
今後の道のりを決める
「経理財務の仕事は、意思決定を支援することである。つまり戦略と実行をつなぐ重要な橋渡し役であり、また実行過程をモニターし、リスクを制御する」
— Yili Dairy社 財務担当ゼネラル・マネージャー Ai Ying Wang氏

CFOは、企業のかじ取りという重要な役割を担うだけでなく、企業戦略の策定と実行を行う中心的な存在になりつつある。他の経営層たちがCFOに期待するのは助言であり、視点や成熟、そして規律に対する構えである。しかしすべてのCFOが、そのために必要なツールやシステム(手法、ガバナンスなど)を備えているわけではなく、このチャンスを十分に活かしきれてはいない。

「経理財務の仕事は、意思決定を支援することである。つまり戦略と実行をつなぐ重要な橋渡し役であり、また実行過程をモニターし、リスクを制御する」
— Yili Dairy社 財務担当ゼネラル・マネージャー Ai Ying Wang氏

経営層からの期待とCFO自身の気持ちを一致させる方法は、CFOがビジネスパートナーとしてなくてはならない存在になることだ。そうなるための最も効果的な手段は、意思決定を支援する力をCFOが養うことである。CFOに成功をもたらす5つの要素は、戦略にフォーカス、組織のアジリティー、データ中心主義、人財の再定義、インテリジェント・ワークフローである。今がまさに、未来への可能性に満ち溢れたときなのである。

この新しい現実を積極的かつオープンに受け入れるために、すべてのCFOは、以下の指針に基づいた取り組みを始めるべきだ:
戦略に注力し、意思決定を支援する
経理財務部門のアジャイル化を進める
データを企業文化の中心に据える
人財に投資する
テクノロジーを活用し、インテリジェンスを強化する
過去の経営層スタディ
2023 C-suite Study reports
役職別レポート
Chief Data Officer:
Turning data into value