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バーチャル・エンタープライズ

バーチャル化した世界で可能性を拓く、新たなコグニティブ・エンタープライズ
未来型先進デジタル企業「バーチャル・エンタープライズ」は、サステナビリティーの実現とビジネスの成長をもたらす基盤となる。


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著者について

Mark Foster

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ChairmanIBM Consulting


John Granger

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Senior Vice PresidentIBM Consulting

AIや自動化、ブロックチェーン、モノのインターネット、5G、クラウド、そして量子コンピューティングの適用が進んだことで、以前は目指すべき将来像であったコグニティブ・エンタープライズは、今や現実のものとなった。

世界中でバーチャル化が加速する革新の時代において、エコシステム、デジタル・ワークフロー、企業のネットワーク化がもたらす影響力は、かつてないほど大きくなっている。そこで生まれつつあるのが「バーチャル・エンタープライズ」だ。本レポートでは、このバーチャル・エンタープライズを支える、エコシステムの参加者の連携を強化する共通の機能やデータなどを、価値の「ゴールデン・スレッド」と呼び、注視することとする。

この数年間、 世界中の企業がテクノロジーの包括的活用を通じたビジネスモデルの変革に向けて、重大な局面に立たされている。デジタル・トランスフォーメーションの対象は、企業のフロントやエッジといった領域から、より奥深いコア領域へと拡大した。またAIや自動化、モノのインターネット(IoT)、ブロックチェーン、そして5Gなどのテクノロジーの成熟度は、大規模な活用が可能なレベルにまで達し、ビジネスに飛躍的な成長をもたらしている。

あらゆる業界の企業が、テクノロジー、プラットフォーム、そしてエクスペリエンスを提供する企業に生まれ変わろうと模索を続けている。私たちはこの模索のフェーズを「コグニティブ・エンタープライズ」の誕生に向けた重要なステップと捉えている。コグニティブ・エンタープライズは、「新たな市場を創出するプラットフォーム」の姿を描き出し、「インテリジェント・ワークフロー」を構築し、「エクスペリエンスと人間性」に生命の火を灯す。

コグニティブ・エンタープライズを構成する3つの基本的要素は、新たな現実世界において広がりを見せている。

新型コロナウイルスは、コグニティブ・エンタープライズの実現において、大きな影響をもたらした。コロナ禍は、指数関数的な速度で進化する「エクスポネンシャル・テクノロジー」の導入が、デジタル・トランスフォーメーションの取り組みの加速や、高い効率性と効果を伴う柔軟なプロセス実現の鍵となることを証明した。また、ハイブリッドクラウド・インフラストラクチャーを活用すれば、消費モデルやサービスが向上することも明らかにした。コグニティブ・エンタープライズを構成する前述の3つの基本的要素は、今日、私たちが接している現実世界においてそれぞれ次のような広がりを見せつつある。

「新たな市場を創出するビジネス・プラットフォーム」は、デジタル化のペースを速め、対象となる範囲を新しいエコシステムやパートナーにまで拡大する。「インテリジェント・ワークフロー」は、大量の顧客や従業員に対応するため、高度な自動化とAIを積極的に活用する。そして、顧客・従業員・市民の安全と健康を守る必要性から、「エクスペリエンスと人間性」について新しい定義が生まれつつある。

バーチャル・
エンタープライズの登場

実は今回のパンデミックによって余儀なくされた「バーチャル化」は、従来、変革の中心的なテーマであった。その上で、次世代の組織・事業モデルとしての「バーチャル・エンタープライズ」の出現が加速している。これまでの体験を原動力に変えて、可能性を新たなレベルに引き上げるバーチャル・エンタープライズは、物理的な資産やインフラストラクチャー、人材の必要性を再評価し、高度なデジタル化、拡張バリュー・チェーン、新たな形態によるパートナーシップの可能性を拓く。

バーチャル・
エンタープライズの登場

実は今回のパンデミックによって余儀なくされた「バーチャル化」は、従来、変革の中心的なテーマであった。その上で、次世代の組織・事業モデルとしての「バーチャル・エンタープライズ」の出現が加速している。これまでの体験を原動力に変えて、可能性を新たなレベルに引き上げるバーチャル・エンタープライズは、物理的な資産やインフラストラクチャー、人材の必要性を再評価し、高度なデジタル化、拡張バリュー・チェーン、新たな形態によるパートナーシップの可能性を拓く。

バーチャル・エンタープライズの重要な特徴として真っ先に挙げられるのは「オープン性」であろう。このオープン性は、以下の3段階の様態で価値をもたらす。

社内
連携とアジリティーに優れたワークフローで、部門や機能をつなぐ
社外
外部のパートナーとの連携 ― ビジネスの核となる目標を達成するために、パートナーとの連携がかつてないほど重要性を増す
つながる社会
拡張されたエコシステム ― 真のプラットフォーム経済を実現するため、プラットフォームへの関与や参画を望むすべての人々の力を活用する
社内
連携とアジリティーに優れたワークフローで、部門や機能をつなぐ
社外
外部のパートナーとの連携 ― ビジネスの核となる目標を達成するために、パートナーとの連携がかつてないほど重要性を増す
つながる社会
拡張されたエコシステム ― 真のプラットフォーム経済を実現するため、プラットフォームへの関与や参画を望むすべての人々の力を活用する

この1年で、顧客や同僚とのバーチャルな接触が極端に増えたことで、人間とテクノロジーのインターフェースも進化した。当初は目新しいものと思われたツールや働き方は、時を待たずに日常のありふれた風景となった。

エンゲージメント醸成のための手法は、もっぱらデジタル・チャネルに置き換わり、市場やアクセスの可能性が広がった。また一方で、共感や帰属意識、人間的なつながりをいかに再構築するかという新たな課題も見つかった。先進的なソフトウェアやテクノロジー・ソリューションは、職務上の人間関係やコラボレーションの可能性を深める一方、課題も浮き彫りにするのである。

私たちはパンデミックの経験を通じて、世界中のすべてがつながっていることや、人類が地球や自分たち自身にどれだけ大きな影響を及ぼし得るのかを再認識させられることとなった。だからこそ、バーチャル・エンタープライズにおいては存在意義や方針、社会的影響がこれまで以上に考慮されなければならない。

気候変動や健康維持、社会的平等の実現といった重要な課題の解決において、エコシステムが高い潜在力を持つことは明らかだ。サステナビリティーとステークホルダー資本主義は経営層にとって最大の関心事となっており、最先端テクノロジーを活用するビジネスモデルは、その実現に欠かせないものとなっている。

ディープ・ダイブ・レポート

バーチャル・エンタープライズの6つの構成要素の詳細(主要な洞察やアクション、顧客の成功事例など)については、『ディープ・ダイブ・レポート』を参照してください。
  1. 新たな市場を創出するプラットフォームとエコシステム

    混乱に直面しながらも、それに立ち向かう企業は、アジリティーとレジリエンスを高めるためにパートナー・プラットフォームを拡張する。その結果、新たな収益を獲得する。 詳しくはこちら

  2. 科学とデータが主導するイノベーション

    政治、環境、産業などに関する社外データを、ディスカバリー・ツールを使って取り込む企業は、継続性とレジリエンスを確保し、かつ拡張することができる。 詳しくはこちら

  3. 拡張インテリジェント・ワークフロー

    アジャイルな組織は、エコシステムを介して経験や情報、関係性を共有することで、実験や意思決定を加速し、非常に大きな価値を生み出す。 詳しくはこちら

  1. 急速に進展するサステナビリティー

    バーチャル・エンタープライズは、世界規模で連帯を強めることで、人が他者や地球に及ぼす影響力を高める。 詳しくはこちら

  2. 人間とテクノロジーの包摂的なパートナーシップ

    パンデミックによって、人間とテクノロジーの関係性は急速に変化したが、バーチャル・エンタープライズはそれを最大限活用している。 詳しくはこちら

  3. オープンでセキュアなハイブリッドクラウドとネットワーク

    オープンでセキュアなハイブリッドクラウド技術は、バーチャル・エンタープライズの基盤を形成し、企業にこれまでにない戦略的・財務的利益をもたらす。 詳しくはこちら

Yara International ASA: 食糧問題の解決を目指して

ノルウェーを拠点とするYara社は、飢餓のない持続可能な世界の実現に向けて、デジタル農業プラットフォームAtfarm/FarmXを開発し、全世界の持続可能な農業を支援している。Yara社は世界最大のミネラル肥料メーカーであり、またデジタル農業ソリューションのグローバル・リーダーでもある。同社が開発したこのプラットフォームは、世界の自営農家をつなぎ、生産力向上に必要な支援を提供する。

総合的なデジタル・サービスと、農業に関する迅速なアドバイスを提供することで、同社は最終的に森林破壊を阻止し、既存農地における生産量の増加に貢献している。例えばこのプラットフォームは、局地的な分単位の気象データに基づき、タイムリーで正確な作物収穫量を予測し、窒素や水の管理方法を提案している。

また特定のクラウドに依存しないこのプラットフォームは、最先端のデータ・サービスを従量課金制で提供している。こうしたサービスによって、農家はIoTセンサーやAIといった最先端のテクノロジーが生み出す、局地的な天気予測や作物の被害予測、リアルタイムの施肥提案などを活用できるようになった。

同サービスを利用する農業生産者は、すでに300万人を上回っている。このプラットフォームによって、Yara社はビジネスモデルを拡大しつつ持続可能な農業を支援し、他社との差別化に成功している。そしてまた、農業ビジネスの透明性と信頼性を高めるブロックチェーンなどの先進テクノロジーの開発も推進している。

成果

同プラットフォームがカバーする耕作可能地は、1,000万ヘクタール以上に及ぶ

Yara社がこの2年間で獲得した農業生産者の数は300万人以上

オンデマンド・ソリューションによって、かんがい用水資源を最大20%節約

Yara社のバーチャル・エンタープライズに対する取り組み

詳しくはこちら
  • 新たな市場を創出するプラットフォームとエコシステム
    • Yara社は農業ビジネスの総合プラットフォームである Atfarm/FarmXを開発し、自営農家同士の連携と生産力向上を支援している。
    • 同社は銀行や物流サービス・プロバイダーの参加を促す ため、プラットフォームを取り巻くエコシステムを拡大している。
    科学とデータが主導するイノベーション
    • Yara社はマイクロ・ファーミングの成功裏な実現に向け、ARを利用したドローンなどのエクスポネンシャル・テクノロジーの試験導入も行っている。
    • 大量のデータ管理機能を自動化するDataOpsのアプローチを採用した結果、データサイエンティストはモデリングとイノベーションに注力することが可能となった。
    拡張インテリジェント・ワークフロー
    • AIを活用したワークフローを、サプライヤーや農家、加工業者、さらにはその取引先にまで拡張している。
    • 局地的な天気予測、作物の被害予測、リアルタイムの土壌活性化のために、ワークフローにIoTセンサー、AI、気象データなどを取り込んで活用している。
    サステナビリティーと影響
    • 「食卓から農場まで」型のバリュー・チェーンであるYara社とIBM Food Trustは、カーボン・ニュートラルと作物トレーサビリティーを推進している。
    • Yara社はより良い農業社会を実現することで、飢餓のない持続可能な世界の実現に貢献している。
    人間とテクノロジーの包摂的なパートナーシップ
    • Yara社は農家やフード・バリュー・チェーン大手企業と連携して、作物の栄養分析、科学に基づく作物の開発、デジタル・ツールの開発を推進している。
    • 作物に関する知見の向上は、測定データの正確化や顧客コミュニケーションの改善に加え、廃棄物の削減と透明性の向上につながっている。
    オープンでセキュアなハイブリッドクラウドとネットワーク
    • 業界初で他社の追随を許さないYara社のプラットフォームは、クラウド環境で運用され、瞬時の情報共有とコラボレーションを実現している。
    • 特定のクラウドに依存しない戦略によって、一貫したデータ・ガバナンスとデータ・セキュリティーを実現できている。
1
新たな市場を創出するプラットフォームとエコシステム
バーチャル・エンタープライズの大きな特徴の1つが、オープン性である。最も重要なことは、オープン性が、より広範なエコシステムを包含するように構想されているビジネス・プラットフォームをさらに拡張させるということだ。多くの企業は、複数のプラットフォームを組み合わせることで、新規市場の獲得が有利になることを認識している。また市場において影響力を高めるためには、重要なプレーヤーと提携すべきだと考えている。プラットフォームの経済性、オープンな接続性、およびエンゲージメントを最適化できれば、バーチャル・エンタープライズはエコシステムのすべての参加者に、新たな可能性を拓くことができるだろう。
ディープ・ダイブ:
主なポイント
オープンなプラットフォームとエコシステムは、成長、効率化、そしてイノベーションの新たな手段をもたらす。
パートナーシップは多くの企業にとって、価値創出のための必須条件となった。成長戦略を実現するためには、関与するエコシステムの数を絞ることで、個別のエコシステムに対する関与の度合いを強めるべきだ。
ブロックチェーンやハイブリッドクラウドなど、オープン性や標準に根差す最先端のテクノロジーは、企業に機会と可能性を与える。
  • Schlumberger社:
    コラボレーションを生み出すクラウドベースのAI環境

    Schlumberger社は最先端のデジタル・ソリューションや革新的テクノロジーを駆使することで、世界のエネルギー業界のパフォーマンスとサステナビリティーの向上に貢献している。同社はDELFIと呼ばれるE&P(Exploration & Production = 探鉱と生産)向けのコグニティブ環境を提供している。これによって顧客はクラウド化を加速させ、さまざまな境界線を超えた自由なコラボレーションを促進し、従来のデータ・サイロからの脱却を図ることができる。

    DELFIを用いれば、エネルギー企業はSchlumberger社の最先端E&Pソリューションやアプリケーションが利用でき、データ主導の新しいワークフローも構築できる。また、AIや分析機能、自動化などの最新テクノロジーを導入することも可能になる。また世界中のどこであっても、DELFI環境を導入することで、エネルギー・データの業界標準である、OSDU™ Data Platformと連携できるようになる。

    成果

    顧客の総所有コストは10~20%削減される見込み

    “Write once, deploy anywhere” (「1回書けば、どこでも展開できる」)というコンセプトのもと、顧客独自の要件に応じたアプリケーションやワークフロー、プラットフォームの開発を加速させる。また大規模なサービスにも対応でき、サービスの導入から実用化までの期間も短縮できる

    これまで50%に達していなかった参入可能な世界市場の範囲を、ほぼ100%に拡大できる

2
科学とデータが主導するイノベーション
バーチャル・エンタープライズのオープン性は、製品やサービスのイノベーションの新しいソース(情報源、人)へのアクセスを加速させる。イノベーションは科学的方法に基づくものであり、社内およびエコシステム・パートナーから取得した膨大なデータを活用しながら、予測分析や予見分析を実施し、常に試行を繰り返すアプローチをとる。かつては製薬企業など研究開発主導型の企業だけが持っていた価値に、今多くの企業が気付き始めている。その結果、多数の企業が、過去ではなく未来を展望し、バリュー・チェーンに埋もれた情報を発見して、創造性を発揮するようになっている。
ディープ・ダイブ:
主なポイント
バーチャル・エンタープライズの視野は時間的には未来、空間的には社外に対して開かれており、新たなデータとインテリジェンスを成長のばねとする。
科学的発見の原理を応用して、企業、プラットフォーム、エコシステム、さらには製品、サービス、ビジネスモデルを革新する。
プロセス・マイニングやニューラル・ネットワーク、群知能、量子コンピューティングなどの先端テクノロジーと新しい種類のデータの組み合わせは、まったく新たな機会を創出し、的確で洞察に基づいた実験やイノベーションを加速する。
  • クリーブランド・クリニック:
    ハイブリッドクラウド、AI、量子コンピューティングで科学的発見を加速

    心臓病治療で第1位にランクされる非営利の専門医療機関クリーブランド・クリニックは、IBMと提携し、「ディスカバリー・アクセラレーター」センターを設立する予定だ。このセンターの目的は、ハイブリッドクラウド、AI、量子コンピューティングといった最新のテクノロジーを用いて、ヘルスケアとライフサイエンスの分野で飛躍的な進歩を達成することだ。クリーブランド・クリニックの研究者は、高度なコンピューター・テクノロジーを用いて、膨大な量のデータを生成・分析し、ゲノミクス、単一細胞トランスクリプトミクス、臨床応用、新規化合物の創出と創薬、ポピュレーション・ヘルスなどの研究を進め、新型コロナ危機のような公衆衛生上の脅威に対する新たなアプローチを含めた研究を行う予定である。またこのセンターでは、ディープ・サーチ、AIと量子コンピューティングによる高度なシミュレーション、生成モデル、そしてAI主導の化学合成の自動化といった、IBMの次世代のテクノロジーやイノベーションに基づく研究を進めようとしている。

    成果

    この10年間の共同プログラムは、ヘルスケアとライフサイエンスにおける、進歩と発見を目的とする

    活用するクラウドがアクセスするIBMの量子システムの数は20以上に及ぶ

    2023年には、量子ビット数1,000以上を目指す

3
拡張インテリジェント・ワークフロー
インテリジェント・ワークフローは、バーチャル・エンタープライズを有機的に機能させる「ゴールデン・スレッド」だ。それはまた、エコシステムの参加者を互いに結び付けるバリュー・チェーンの基盤でもある。ワークフローの範囲が広がれば、高度な自動化、AI、IoTなどの応用技術の効果は何倍にも高まり、効率化や差別化が進むことで、プラットフォームの魅力が増す。バーチャル化によって、ネットワークや接続性、スキル・エンゲージメントなどの可能性はさらに広がり、ワークフローも活性化し、アジリティーが高まる。
ディープ・ダイブ:
主なポイント
エンド・ユーザーの体験は、企業だけでなく、プラットフォームやエコシステム全体が創出するものであり、拡張インテリジェント・ワークフローはそれらを統合する、バーチャル・エンタープライズのゴールデン・スレッドである。
インテリジェント・ワークフローがその対象を、顧客やサプライヤー、エコシステムのパートナー、その他の利害関係者にまで広げれば、価値は飛躍的に高まる。
バーチャル化のテクノロジーは、インテリジェント・ワークフローとそれを支えるプラットフォームの効率と効果を向上させる。
  • we.trade社:
    インテリジェントなワークフローで、貿易業務を簡素化

    we.trade社はヨーロッパの主要銀行の共同出資により設立され、世界初のデジタル金融貿易プラットフォームを提供している。ブロックチェーン・テクノロジーを用いて、買い手、売り手、銀行、保険会社、物流機関を、より高いデータ・インテリジェンスとトレーサビリティーに結び付ける。そして、国境を越えた取引を簡素化し、信頼性と透明性を高め、エコシステムへの参加障壁を軽減し、参加者に新たな市場を提供する。

    このプラットフォームは、貿易金融の融資ワークフローを合理化することで、摩擦を減らし、企業の新市場への進出を後押しする。また貿易会社に、保険への高信頼のアクセス、信用格付け、ロジスティクス・サービスなどを提供し、カウンターパーティー・リスクを低減させる。さらに取引の自動化、エンド・ツー・エンドのトレード・エコシステムの統合を支援する。

    成果

    トランザクション処理のコストを80%削減

    2019年のサービス開始以降、参加者は15カ国17銀行まで拡大

    400以上のクーリエ・国際配送業者を追跡調査

4
サステナビリティーと影響
バーチャル・エンタープライズは、世界規模で連帯を強めることで、人が他者や地球に及ぼす影響力を高める。また、その存在意義や意図を、より広範な社会的意義に合わせることができる。サステナビリティーとステークホルダー資本主義が経営層に浸透することにより、新たなエコシステム・ビジネスモデルは、気候変動、健康維持、安全保障、平等など現代における最重要課題の解決に貢献する。このことは顧客、パートナー、そして従業員が、組織と関わる際にもますます大きな役割を果たすだろう。
ディープ・ダイブ:
主なポイント
顧客、従業員、エコシステムのパートナー、そしてコミュニティー全体とともに成功を目指すには、サステナビリティーと企業の存在意義が、ますます重要な要素となっている。
バーチャル化は、企業のサステナビリティーへの挑戦を支援すると同時に、ビジネス・チャンスを切り開く能力を高める。
エコシステムとその技術プラットフォームは、複雑な課題を解決する中心的な役割を担い、顧客や従業員にその存在意義を明示する。
  • Oren: 鉱業向けマーケットプレイス
    デジタル・トランスフォーメーションによるサステナビリティーの推進

    鉱業界のエコシステムの中で、長年にわたり多くの顧客関係を築いてきたShell社は、IBMと共同で業界初のデジタルB2Bマーケットプレイス「Oren」を立ち上げた。Orenの設立目的は、プラットフォームを開示して、買い手と売り手を結び付け、ソリューションやサービスのキュレーションを行うことで、鉱業界におけるデジタル・サービスの活用やサステナビリティーの推進を加速させることである。

    Orenは使いやすさを考慮して設計されており、ソリューションやサービスをワンストップ型で提供することで、デジタル・トランスフォーメーションの実現という難しい課題の解決を目指している。またオペレーションのデジタル化、効率性の向上、排出量の削減、社会的営業ライセンスの拡張等に関し、長期的なデジタル・ロードマップを提供することで、鉱業事業者が戦略的にサステナビリティーを実現できるよう支援している。

    成果

    成果鉱業界初のB2Bデジタル・マーケットプレイス

    60を超える即戦力となるソリューション

    ネットゼロ、脱炭素化の達成を支援するエコシステム・ツール

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人間とテクノロジーの包摂的なパートナーシップ
バーチャル・エンタープライズは、パンデミックを通して普及した新しいツールや働き方を取り入れる。人とテクノロジーのインターフェースの進化はその一例である。こうした進化によって、デジタル・チャネルを通じた顧客とのコミュニケーションや、複数のプロセスにまたがってシームレスに行われるバーチャル・ワークなどの質が飛躍的に高まった。また人の共感能力・創造性・帰属意識の低下といった深刻化しつつある課題に対処するために、新たな形のリーダーシップ、インスピレーション、およびエンゲージメントを創出する役割も期待されている。
ディープ・ダイブ:
主なポイント
パンデミックは顧客と従業員のやりとりのバーチャル化を加速させ、新たな働き方への不可逆的な変化をもたらした。
業務がバーチャル化され、世界中の人材に容易にアクセスできるようになったことは、企業と従業員に新しい機会と課題をもたらした。
ハイブリッドな新しい働き方が広まりつつある中、個人・チーム・企業は新たなツールとルールを必要としている。
  • Orange France:
    人材とテクノロジーを融合

    デジタル・チャネルを活用した新しい顧客サービスを開発する、フランスの大手通信会社Orange France社は、従業員のデジタル・コンピテンシーを強化する包括的プログラムOrange Campusを開発した。

    Orange France社は共創スタジオを使って、人材能力とテクノロジーがいかにシームレスに連携できるかのビジョンを描いた。この過程において、それまで150種類あった役職を主要な30種類にまで絞り込み、将来の従業員育成に必要な80種類のデジタル・コンピテンシーを特定した。また従業員が新たなデジタル・スキルを習得できるようトレーニング・パスを再編し、キャリアの流動性を高めた。

    成果

    改革に携わる従業員の半分は、Orange Campusを使用して新しいデジタル・スキルを習得している

    デジタル・チャネルの活用によって顧客売上は150%増加し、NPSは10ポイント上昇した

    デジタル・アシスタントをフルに活用したセルフ・サービスの利用率は30%増加した

6
オープンでセキュアなハイブリッドクラウドとネットワーク
バーチャル・エンタープライズは、ハイブリッドクラウド・アーキテクチャーがもたらす柔軟性と敏捷性を縦横無尽に駆使する。これによって企業は、オープン性を実現してビジネス・パートナーとの連携を強めたり、最先端のオープン・テクノロジーを活かしてイノベーションを加速させたりすることができる。またバーチャル・エンタープライズは、堅牢なネットワークと安全な技術インフラストラクチャーを基盤とすることで、適切かつ包括的なアーキテクチャーに基づいてワークロードを適正に配置したり、周囲の環境との互換性を確保したりする。現在、多くの企業がバーチャル・エンタープライズへの移行に乗り出しているが、その前提として適応性とレジリエンスという2つの要素が必要となる。
ディープ・ダイブ:
主なポイント
バーチャル・エンタープライズのオープン性は、オープンでセキュアなハイブリッド・マルチクラウドの技術アーキテクチャーによって実現される必要がある。
新しいエコシステムと拡張インテリジェント・ワークフローが、データのアクセス性・柔軟性・TCO(総所有コスト)を最大限活用するには、大規模なアプリケーション・モダナイゼーションやテクノロジーの刷新が必要である。
バーチャル・エンタープライズの成功には、代替可能なスキルセットとオープンでセキュアなソリューションの活用、またアーキテクチャーの選択可能性などが不可欠となる。
  • Delta Air Lines社:
    技術プラットフォームのモダナイゼーション

    Delta Air Lines社は、自社のデジタル・プレゼンスを常に進化させ、顧客および従業員体験を向上させる必要性を理解している。パンデミックの影響により需要が減少する中、これをデジタル基盤とデジタル・オペレーションのモダナイゼーション(最新化)の好機と捉えている。

    同社はデジタル・トランスフォーメーションの一環として、顧客体験の向上と全社規模の効率化を目指し、データとアプリケーションのほとんどをクラウドに移行する作業を進めている。オープンなハイブリッドクラウド・アーキテクチャーに移行することで、開発や展開、セキュリティー、運用などにおいて、一貫性を保ち、標準に準拠したアプローチの採用が可能となる。この新しいクラウド・アーキテクチャーは、同社のネットワークを統合し、アジリティーを高め、アプリケーション横断的なデータの活用を推進するだろう。

    成果

    Delta社は2024年までに、アプリケーションとデータベースの90%以上をクラウド環境に移行する予定

    移行完了後には、開発分野の生産性は30%以上改善される見込み

    1,000人以上のITエキスパートが、アプリケーションの開発と提供、データ管理、セキュリティーに関するトレーニングを受ける予定

1
Garage:バーチャル・エンタープライズを実現するための手法

バーチャル・エンタープライズに見られるような事業上の変化は、一企業からエコシステム・パートナー全体に至るまで、極めて広い範囲に影響を及ぼす。包括的な戦略を立て、利害関係者の調整を続け、意味のある加速的な進歩を実現すると同時に、単に企業に変化を押し付けたり、アジャイルによる混乱を引き起こしたりしないよう注意を払う必要があるだろう。

Garage手法は、価値の「ゴールデン・スレッド」を追求する新たなアーキテクチャーにさまざまな構成要素と参加者を統合し、パフォーマンスを強化する要素を加え、広範囲にわたって人間、プロセス、システムを互いに紡ぎ合わせる効果的な方法だ。また共創(Co-create)、共同実行(Co-execute)、共同運用(Co-operate)に基づくこのGarageモデルは、パンデミックがもたらしたバーチャル化した世界においても、効果を発揮することが証明されている。

企業はあらゆる場所のスキル、能力、知識を活用することで、生産性を大幅に改善することができる。またエコシステム・パートナーは、企業内の機能的な境界線を取り払うことで、イノベーションやデジタル・トランスフォーメーションに参加できるようになる。

この手法においては、中核的な重点領域と戦略的な方針が強化されるだけでなく、アジャイルで機能横断的なチームが活動するためのアーキテクチャー・ルールの制定もなされる。さらにGarageには、機会を特定したり、アイディエーションや期待されるインパクトの鍵となるデータがそろっているため、エコシステム内のソリューションと接続すれば、進化を加速させることができるはずだ。

バーチャル・エンタープライズ実現の主要なアクション・ガイド

バーチャル・エンタープライズの6つの必須項目は、Garage手法によって実現し、加速させることができる。Garage手法は、総合的なトランスフォーメーション・プログラムの一環として組み込まれる拡張インテリジェント・ワークフローとも適合する。この手法を通じて、以下の6つの項目が可能となる。

織り込む

戦略策定の基礎となる戦略的意図や、ビジネス・プラットフォームのデザインの中に、エコシステムが生み出す機会を織り込み、デジタル・トランスフォーメーションを加速させる原動力とする。

革新する

科学とデータ主導のアプローチで革新を進め、ワークフローやプラットフォーム、さらにはエコシステム全体の進化を促す。

拡張する

インテリジェント・ワークフローを拡張し、テクノロジーが誘発するビジネス・トランスフォーメーションという「差別化をもたらすゴールデン・スレッド」を創出する。

解決する

SDGs(持続可能な開発目標)達成のために、チームの目標やエンゲージメントを改善しつつ、実効性ある戦略策定を通じて、現在の最重要課題を解決する。

権限委譲する

インテリジェント・ワークフローを充実させ、顧客体験・従業員体験の向上のために試行・検証を継続できるよう、バーチャル・ワーカーに権限委譲を行う。

加速させる

ハイブリッドクラウドとネットワークを介して、変革プログラムの実施を加速させ、プラットフォーム、エコシステム、そして拡張ワークフローを成長させる。

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