バーチャル・エンタープライズ : 人間とテクノロジーの共存がもたらす創造性
デジタル化は従来型のワークフローに新たな課題を突き付けている。かつて人が行っていた作業が機械に取って代わられているのだ。人々は抵抗し、恐怖すら抱くかもしれない。しかし、テクノロジーを適切に導入することができれば、生産性と従業員体験の両方を改善できる可能性がある。
人間とテクノロジーの包摂的なパートナーシップを築くことが、今後のバーチャル・エンタープライズの在り方を決定づける。このパートナーシップは組織の人財およびエコシステムの潜在的な可能性を第一に考える。リーダーは新しいシステムやツールの導入に当たって共感と意図を重視することによって、機械と人間を最高の形で活かすことが可能となる。さらに、さまざまな成果や人財の有効活用、ワークフォースの多様性、ワーク・ライフ・バランスを最適化することができる。
経営層の半数超が今後3年の間に、いつでもどこでもネット経由でつながる、専門スキルを有した人財プールを活用する意向を示している。
仕事のバーチャル化に対応する
私たちがともに働き、つながる手法は急速な変化を遂げており、顧客と従業員との接点のバーチャル化が変化をさらに加速している。いつでもどこでも仕事ができるなど、仕事とコラボレーションの新たな可能性が広がった結果、企業はパートナーとのエコシステム全体で、既存のプロセスを見直し、新たに創造し直すことを迫られている。
バーチャル・エンタープライズにとって、これは間違いなくすばらしい機会だ。テクノロジーを巧みに、かつ意識的に実装することによって、相互協力的で実効性の高い、最新の組織文化を構築し、人財の才能を高めるチャンスなのである。
労働市場から排除されてきた人々にとっては、テクノロジーを活用したエコシステムがあれば、経済的機会を得るために移住する必要性がなくなり、グローバル経済に参加しやすくなる。
進化を続ける人間とテクノロジーの関係
リーダーの差別化要因
デジタル化は労働の新たな可能性を解き放つが、それと同時に共感や帰属意識、人間的なつながりの希薄化など、新たな課題も生み出す。このように、進化し続けるソフトウェアやテクノロジーによって職場関係の向上やコラボレーションが可能となる半面、その真価も問われてきた。
先進的な企業はAIやクラウド、自動化技術を統合することで、この新たな流れを現実化し、データを原動力とするインテリジェント・ワークフローを強化している。これが新しいアジャイルなビジネスモデルの創出を可能にするとともに、バーチャル・エンタープライズにおける価値の「ゴールデン・スレッド」として機能し、未来の働き方のあるべき姿を形作っていく。
リーダーシップを成功させるためには以下の4点に優先的に取り組む必要がある。
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文化に対する意識:リーダー企業の89%は、インテリジェント・オートメーションの価値を最大限引き出すためには、従業員のリスキリングと定着化はもちろん、社内の文化とプロセスを変革することが必要だと認識している。この取り組みには、新しいテクノロジー・ツールに対して責任ある使い方をすることや、デモグラフィック(性別・年齢・人種など人口統計学的な属性)による不平等や偏見の回避などが含まれる。
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真のコミュニケーション:自社リーダーのコミュニケーションは信頼でき、共感性が高いと回答した経営幹部はわずか34%にとどまった。勤務先の選択がかつてないほど自由な労働市場の中で、各社のリーダーは個々の従業員に合った働きがいを提供し、包摂的でポジティブな職場文化を意識的に醸成する必要がある。
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インテリジェント・テクノロジー:2023年までには、定型作業の12%、ビジネス上の単純な意思決定の11%が、インテリジェント・マシンによって実行されるようになるとみられる。2017年時点ではそれぞれ7%、6%だった。インテリジェント・マシンに任せるタスクが増えることで、従業員はより価値の高い業務に集中することが可能になる。
- ワークフローの自動化:最近のIBV調査によると、企業内の複雑な全社的業務が自動化される割合は、2023年までに現在の7倍に達する。
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著者について
John Granger, Senior Vice President, IBM ConsultingTina Marron-Partridge, Managing Partner, Talent Transformation, IBM Consulting
Obed Louissaint, Senior Vice President, Transformation and Culture, IBM
Kelly Ribeiro, Partner, Innovation Unit Leader Talent Transformation, IBM Consulting
発行日 2021年11月17日