レポート概要:
本レポートでは、不確実性が加速する時代を乗り越えた先の希望として、最終章で2030年の未来像を描いています。
そこでは、企業がテクノロジーを駆使して変容する社会環境や生活者意識に寄り添い、新たな関係性を築いて成長をもたらす可能性が見いだされます。
こうした世界を実現する鍵は、未来のあるべき姿に関する議論です。現在直面する困難(「不安多層化社会の到来」)を直視し、その本質を理解し、さらにその克服方法を踏まえることが前提となります。
本レポートでは最新調査の結果に基づき、不確実な時代の分析、鍵となる顧客タイプと変革の方向性、そして目指すべき未来像を順を追って解説していきます。
レポート詳細:
本レポートではまず、生活者が2022年に直面した多様な不安要因の本質を把握するために、コロナ禍による社会停滞、ロシアによるウクライナ侵攻、異常気象に伴う世界経済の停滞、そして生活資材やエネルギーの物価上昇などの実態を振り返ります。IBM Future Design Lab.はこの時代の深層をつかむため、2022年に第3回目となる生活者調査を実施し、生活意欲が減少した縮小均衡の状況にあることを明らかにしました。その上で多様な不安要因により、生活者が変化を望みつつも行動を抑制する傾向が高まる社会が訪れたと考え、“不安多層化社会”と命名しました。
また、この厳しい環境の中でさえ、事業成長をけん引する可能性のある顧客タイプが存在し、そのマインドセットが「自律的楽観性」と呼ぶべき属性をもっていることを突き止めました。
具体的には、「何事も何とかなると思うので、将来のことは心配していない」に「あてはまる」と回答した 20.4%の回答者が該当します。この層は「金銭的な余裕がなくても、楽しく暮らせる」、「 地元や近所に、信頼できる仲間やコミュニティーがある」といった意識が強いことがわかっています。
我々はこの楽観性が「自分で何とかできる」という主体性と、お金に縛られない幸福感や仲間の存在などの「セーフティーネット」に裏付けられていると考えました。
つまり、現実逃避的な楽観性ではなく、これら2つの特徴を備えた積極的な楽観性を持っているからこそ、不安多層化社会にあってもこうした層の人たちは前向きに希望を維持できているのです。
具体的には、こうした潜在的な需要から、今後も「エンゲージメント商圏」の重要性が増すと結論づけています。
また、不安多層化社会での事業成長には、上述のような生活者の最新の変化を捉え、滋養する体験価値の提案が求められることから、サービス・ヒューマンインターフェース™戦略の採用により自社事業を相互成長モデルへと変化させる必要があることも再確認しました。
不確実性の高い条件下にあっても、こうした自己肯定的なマインドを維持できる生活者層の存在は、業態を超えたすべてのビジネスや政策決定の分野においても重要な鍵となるでしょう。
最後に、IBM Future Design Lab.の戦略ペルソナである、2002年生まれのエニシ君の未来の暮らしぶりを通じて、不安多層化社会の後に訪れる我々の仮説が実現した社会を追体験していただきます。そこでは、「不安多層化社会の先に見える希望」として、危機克服の要である生活者の自助的楽観性の支援を、企業や社会、テクノロジー、生活者がそれぞれの役割を果たしながら実現している姿を感じていただけるよう、主要なソリューションのエッセンスを具体的なナラティブの中に表現しています。
「悲観は気分、楽観は意志」
不安多層化社会では、個人も企業も、強い意志を持って未来の可能性に挑むことが求められます。強い意志を持って未来を切り拓くにあたり、ビジョンを示し、共感を得ることが重要です。経営者にとっては、幅広いステークホルダーを巻き込み、理想の未来について議論することが不可欠となります。本レポートでは、新たな時代に成長実現の基となるポリシーを磨き、戦略を構築するヒントとなる洞察を提示いたします。
詳しくはレポートをお読みください。
著者について
髙荷 力, 日本アイ・ビー・エム株式会社, IBMコンサルティング事業本部 IBM Future Design Lab. 所長/CVO 顧客洞察スペシャリスト発行日 2023年5月28日