バーチャル・エンタープライズ: 新たな市場を創出するプラットフォームとエコシステムの力
バーチャル・エンタープライズの中核を成すオープン性により、エコシステムは経済全体のパフォーマンスやインパクトを推進するエンジンとなった。混乱やディスラプション(創造的破壊) に直面している企業は、拡張されたパートナーとのプラットフォームを通じてアジリティーとレジリエンスを向上させ、新たな収益機会を獲得することができる。こうした機会を探る企業にとって、エコシステムは成長と拡大のための不可欠な手段となっている
IBM Institute for Business Value(IBV)が最近実施した調査によると、16業界において、エコシステムとの連携に最も注力する企業は、他企業より高い成長率とビジネス価値を生み出していた。パンデミックの間も、このようなエコシステムのリーダー企業の収益成長率は他社を5倍上回っていた。
オープンなプラットフォームとエコシステムは、成長や効率化、イノベーションの新たな手段をもたらす。
しかし、エコシステムとつながれば自動的に価値を生み出せるわけではない。企業が旧来のアナログな方法で業務を続ければ、潜在力はうまく活かされない。現在、ほとんどの組織がさまざまなプラットフォームの参加者あるいは所有者となり、エコシステム戦略を策定しているが、そうした取り組みは期待外れの結果に終わる可能性もある。必要とされているのは、ビジネスを意識的にデジタル変革しようとする努力だ。
高まる企業のオープン志向
企業が既存および新規のエコシステムから価値を創造し、獲得するためには 、考え抜かれた適切な措置を講じる必要がある。価値に焦点を置いた戦略を適切に練り上げていくこと、すなわち、組織は価値創造の機会とそのリスクのポートフォリオを適切に管理することによってのみ、市場を創出するプラットフォームやエコシステムの変革の可能性を完全に活用できるようになる。
エコシステムのリーダー企業
エコシステムのリーダー企業は、どのような企業なのだろうか。プラットフォームやエコシステムから価値を引き出すための、唯一のモデルや方法は存在しない。しかし、エコシステムのリーダー企業の成功は、自社や自社が身を置く環境に適した、独自の戦略および運用アプローチを見いだしたことにある。
IBV は企業の成功を主に2つの側面から評価することで、リーダー企業を特定している。エコシステム内で獲得できる価値の見込みと、そのエコシステム内における成熟度だ。リーダー企業はエコシステム内での成熟度が高く、価値の獲得に関してポテンシャルの高い環境に身を置いている。
エコシステムに投資しているテクノロジー導入企業は、収益面で40%の成長プレミアムを得ている。
そうした組織は受動的ではない。成功している企業は多くのリスクを取って大規模な投資を行うことで、この2つの側面で地位を守り、発展させていくことに注力し続けている。
このようなエコシステムのリーダー企業は、自らの価値の源泉について「当社は顧客との関係性を有している」 と表現している。今回調査したリーダー企業の半数超が、成功の第一の要因として「既存の戦略的関係の強化」を挙げている。さらに、こうした企業は新たな製品・サービスといったイノベーションへの投資を増やしているほか、新しい産業や市場、顧客へのアクセスに目を向けている。
調査結果から、リーダー企業の成功要因として以下の4つの優先事項が挙げられる。
リーダー企業の60%が、特許などで独占するテクノロジーからオープンなテクノロジーへ大きくシフトしていると回答。
顧客との関係性:
74%が、顧客との関係強化は価値を追求するための重要な推進力になると指摘。
イノベーション:
49%が、価値創造を最大化するためにはイノベーションが必要になると回答。
アジリティー:
42%が、成功を阻害する最大要因の1つは、組織のアジリティーの欠如だと認識 。
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新たなビジネス・チャンスを切り拓き、複雑な環境問題を解決し、また顧客と従業員により良い経営戦略を提示する上で、どのようにバーチャル・エンタープライズが役立つのかをご覧いただけます。
著者について
John Granger, Senior Vice President, IBM ConsultingLula Mohanty, Managing Partner, Asia Pacific, IBM Consulting
Jason Kelley, Managing Partner and General Manager, Global Strategic Partners, IBM Consulting
Jamie Cattell, Managing Partner and Service Line Leader, IBM Consulting
Golnar Pooya, Partner—Client Partner, ES&iX, IBM Consulting
発行日 2021年12月1日