バーチャル・エンタープライズ:拡張インテリジェント・ワークフローの魔法
バーチャル・エンタープライズの中核がアジリティーならば、体験・情報・関係性をエコシステム全体に伝達する役割を担う鍵は、拡張インテリジェント・ワークフローであろう。これにより、一段と優れた実験的な試みや意思決定をより迅速に行うことができ、飛躍的な価値の創出につながる。
先進的な企業は、スピードと効率を追求する。彼らは効率化と最適化がなされたデジタル・インテリジェント・ワークフローを構築し、保護されたデータを活用して、すべての拠点間(Any-to-Any)におけるエンド・ツー・エンドな環境で、シームレスな接続をスムーズに実現している。これらのワークフローは、AIの活用によって自動化され、顧客の急激な需要増加に際して、業務の継続性が担保されるよう調整されている。
経営層はインテリジェント・オートメーションは顧客体験、効率性、意思決定を向上すると考えている。
このワークフローには動的な顧客対応、予防的メンテナンス、リアルタイムの在庫状況などの、予測インテリジェンスが組み込まれている。ワークフローの自動化により、デジタルを活用した意思決定が可能となり、「ネクスト・ベスト・アクション」(次のおすすめアクション)のための判断の迅速化や優先順位付け、および提案が可能になる。
新しい働き方、エコシステム思考とバーチャル化
インテリジェント・オートメーションのメリットは、それが変革につながるということである。最近のIBMInstituteforBusinessValueの調査によると、経営層は、「インテリジェント・オートメーションによって、組織に多くのメリットがもたらされる」と考えている。メリットの最上位には「顧客体験の向上」、次いで「効率性の向上(運用コストの削減)」、さらに「意思決定の向上」が挙がっている。その他のメリットとしては、「信頼性の向上」や「リスクの低減」などがある。それらの重要性はパンデミック前には過小評価されていたが、労働力のミスマッチやサプライチェーンの問題、および顧客サービスの破壊的イノベーションといった課題に企業が対応を迫られる中で、広く認識されるようになった。
さらに、拡張インテリジェント・ワークフローを再構築すれば、バーチャルなナレッジ・ワーカーの活躍の場を、エンジニアリングや製造の現場にまで広げることができる。IoTとセンシングは、企業のエッジ領域や製造現場からの情報をワークフローに流し込み、さらなる自動化や洞察の発見、予測レベルの向上を可能にする。
バーチャル・エンタープライズでは、拡張インテリジェント・ワークフローを通じて、ハイパー・インターコネクティビティー(超相互接続性)を実現させる。
モノとデジタルの掛け合わせにより、自動化とインテリジェント・ワークフローは、顧客サービスや製造、流通、輸送、およびフィールド・サービスにおいて、人手による介入が非常に少ない、またはまったく必要としないオペレーションを可能にする。コンピューター・モデリングは、センサー技術、AI、エッジ・アクセス、さらには量子処理といった、前例のない進歩に支えられ、新たな発見をもたらす。
こうしたメリットを得られるかどうかは、よりセキュアで柔軟なコネクティビティーと相互運用性にかかっている。つまりマシンが、他のマシンやあらゆるエクスポネンシャル・テクノロジーと、容易に接続できる状態にあることが決定的に重要となる。AIと機械学習のアルゴリズムの効率性が高まったことで、これらのデバイスのプログラミングや革新的なユースケースの考案、および必要とされるエネルギーの削減は、さらに容易となった。
拡張インテリジェント・ワークフローが、バーチャルな構成要素とエコシステムを統合
ワークフロー・リーダーの特徴
ワークフロー・リーダーシップとはどのようなものか。拡張インテリジェント・ワークフローを導入した企業は、新たな洞察・柔軟な運用・大きな価値を生み出す継続的学習などによって、他社との差別化を図っている。顧客データの分析が、サービスの組み合わせを再構築するきっかけとなることもあるだろう。運用プロセスにおけるアクティビティーやパフォーマンスの継続的なモニタリングによって、改善すべき領域が明確化されたり、高度な判断が必要なシーンでの自動化や人間による介入が促進されたりする。新たに得られる膨大なデータに対してAIと機械学習が適用されることで、パターン認識とワークフロー最適化の可能性が大きく広がる。
IBVの調査によると、ワークフロー・リーダーシップの成功は、以下の4つの事項に左右される。
オープン性:「競合他社や類似する組織と比較して、自社のオープン性と透明性が優れている」と回答した経営層は、わずか36%だった。一方で、経営層の50%以上が、「透明性と可視性が、今後3年間で極めて重要な優位性になる」と述べている。
イノベーション:経営層の42%が、「自社のイノベーションのほとんどが、今後3年間で、顧客やエコシステムの参加者とのパートナーシップを伴う、オープンなアプローチに基づくものになる」と考えている。
アジリティー:半数近くの経営層が、重要なビジネス上の優先事項として「オペレーションのアジリティー向上」を挙げており、「今後3年間で、アジャイルなオペレーション・モデルが、流動的なワークチームを補完することになる」と述べている。
自動化:自動化を進めている経営層の78%が、「機械によるインテリジェントな意思決定は、今後3年間で、日常的なものからより複雑なものへ、またはミッションクリティカルな意思決定へと進化する」と述べている。
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バーチャル・エンタープライズが新しい働き方、エコシステム思考、バーチャル化を可能にすることで、これらの成功要因をどのように実現するか、ぜひ詳細をご覧ください。
著者について
John Granger, Senior Vice President, IBM ConsultingJonathan Wright, Managing Partner, Supply Chain and Finance Transformation, Sustainability, IBM
Paul Papas, Global Managing Partner, Business Transformation Services, IBM Consulting
Mie Matsuo, Managing Partner, Business Transformation Services Japan, IBM Consulting
発行日 2021年9月9日