ホームサステナビリティー

ERPでSXを加速ー「環境」が呼び込むビジネス好機

SAP社の協力のもとIBVからサステナビリティー推進におけるERP活用レポートをお届けします。 財務実績管理と同等の厳格さが求められるサステナビリティーの管理を効果的に行うためのヒントが盛り込まれています。

ERPを活用してサステナビリティー目標の達成をどのように目指すのか、その実態をIBVがSAP社と共に調査

サステナビリティーが企業の重要課題として急浮上しています。持続可能なビジネス運営は、もはや選択するものではなく不可欠な取り組みです。サステナビリティーが自社の最優先事項であるとするCEOは、わずか1年の間に37%増加しました(2022年調査)。

経営層の誰もが取締役会や投資家、顧客、従業員、規制当局の大きな圧力にさらされています。事業活動において環境への悪影響となる炭素排出や廃棄物などを減らすと同時に、収益性が高く、持続可能で、低炭素を実現するビジネスを生み出すよう迫られているのです。

さらに、環境対策の改善や財務・非財務の情報開示を求める当局の規制強化が世界的に急速に広がっています。既存の規制に加え、新たに上積みされる規制を守りながらビジネスを進めるのは、とてつもなく複雑です。しかし、サステナブルなビジネス運営を実現できれば競争優位性につながる可能性があります。では、そうしたビジネスについて効果を測定・評価したり、管理・運営したりするためには、経営層はどうすればよいでしょうか。
 

企業の「バックボーン(基幹)」となる:
エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)システム

経営層は先を見越して日常的なビジネス上の意思決定を行う必要があり、その際の情報管理はERPシステムで行われることが多くあります。サステナブル経営を行う上で意味のある成果を実現するためには、事業に関するさまざまな重要情報が必要となりますが、情報ソースの有機的なつながりを欠いたまま活用している企業が非常に多い現状です。

サステナビリティーの成果は、財務実績と同等の厳格な管理が求められます。真のサステナブル経営を目指すためには、ビジネス・データの透明性が不可欠ですが、これを企業が確保できていないことは珍しくありません。ここで有効となる戦略は、どのような企業でもデータの「バックボーン(基幹)」となるERPシステムを活用することです。

IBVとSAP社は、企業がどのようにERPを活用してサステナビリティー目標を達成しているかを明らかにするため、経済分析・予測を手掛けるOxford Economics社の協力を得て、世界各国のさまざまな業界で環境サステナビリティー戦略に携わる企業幹部2,125人以上を対象に調査を実施しました。その結果、環境と財務の両面で競合他社を上回る成果を上げている企業は、ERPを積極的に活用していることがわかりました。これは特筆すべき発見です。

ERPはほぼすべての社内ビジネス・プロセスの情報を記録するテクノロジーです。財務と環境双方の目標をつなぎ、指標データの信頼性を高めるとともにアクセス容易性を実現します。さらに、他システムと連携してコストの透明性と可視性を実現します。これにより、環境への配慮を伴う、規制に則ったビジネス上の重要な意思決定を一貫性と信頼性をもって行うことができます。

大切なことは、環境に対するコミットメント(強い決意や責任を伴う公約)に従って行動することです。世界の有力企業でつくる「持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)」も炭素会計* に関する最近の発表でこの点を強調しています。企業はERPを導入することによって、全社的なデータを記録・報告することに加え、行動へ結実させることができ、多くのサステナビリティーをめぐる複雑な課題や要求を解決することが容易になります。

* 炭素会計は事業活動が温室効果ガスの排出や削減にどれだけ寄与したかを計測・開示する取り組み

 

好業績企業はサステナビリティーを優先

本調査では、サステナビリティー活動で高い成果を上げている企業グループの存在が浮かび上がりました。調査対象となった2,125人以上のビジネス・リーダーのうち15%は、環境サステナビリティーに優先的に取り組み、計画を具体化して周知・実行し、目標達成の実績では他社を寄せ付けません。本レポートではこのグループを「the Environmental Sustainability Enabled(the Enabled)」(環境サステナビリティー積極派)と呼びます。環境改善へ重点的に取り組んでいるだけでなく、例外なくERPをデータの管理・運用に活用してサステナビリティー目標の実現を図っているためです。調査によると、環境サステナビリティー積極派は競合他社よりも以下の点が優れていました。
 

  • 優れた業績。例えば、サステナビリティーの取り組みが遅れている企業と比べて収益性が46%高い。
  • 環境対策での高い実績。サステナビリティー活動で成果を上げている企業のほぼ60%は、環境サステナビリティー面でも他社を上回る実績を残している。
  • ビジネスの強靭(きょうじん)化。84%が、環境サステナビリティーはイノベーションの原動力になると回答。
     

これとは別に環境への取り組みに否定的な企業も、全体の36%存在しました。本レポートでは、このグループを「the Environmental Sustainability Reluctant (the Reluctant)」(環境サステナビリティー消極派)と呼びます。このグループは自社の成功に環境サステナビリティーが重要だとは考えず、コミットメントもないに等しい状態です。

ERPを重視する「環境サステナビリティー積極派」は、「消極派」と比べて46%も収益性が高いことがわかりました。「積極派」企業が環境と財務の両面で成功している背景として次の4つの要因があることが明らかとなりました(図参照)。
 

  • 環境対策の戦略に、具体的な目標の達成を目指す全社的コミットメントが内包されている。
  • 環境目標にイノベーションと変革の精神が取り込まれている。
  • 改善の取り組みが計測可能な成果を出せるよう後押しして報奨を与える組織文化がある。
  • テクノロジーを導入することで環境対策を加速している。具体的には、戦略的優先課題を設定したり、データから得たインサイト(洞察)とイノベーションを活用。


全社一丸の「グリーン化」:包括的かつ組織横断的なアプローチ

組織の環境面および財務面での成功を実現

出典:IBM Institute for Business ValueおよびSAP社が、サステナビリティー担当の経営層2,125人を対象に、オックスフォード・エコノミクス社の協力を得て実施した調査。

戦略を具体的な行動に落とし込んでサステナビリティーの取り組みを成功させるためには、組織的にエンド・ツー・エンドの包括的アプローチを採用することが必要です。社内のみならずエコシステム全体で、各種の業務やプロセス、データ、コンプライアンス(法令順守)にサステナビリティーの取り組みや環境対策の意識を行きわたらせることで、目標の達成も見えてきます。ここで大きな変革をもたらす「ゲーム・チェンジャー」となり得るのが、ERPです。業務やプロセス、データ処理の技術基盤となるためです。

詳しいレポートは以下からダウンロードが可能です。「環境サステナビリティー積極派」の経験から得た重要な教訓や、ERPシステムを用いてサステナビリティーを推進するための具体的なステップについてご紹介しています。

 

監訳者

鈴村敏央

IBM コンサルティング事業本部
ファイナンス・サプライチェーン・
トランスフォーメーション兼サステナビリティー担当
シニア・パートナー

 

川尻第貴

IBM コンサルティング事業本部
ファイナンス・サプライチェーン・
トランスフォーメーション兼サステナビリティー担当
アソシエイト・パートナー

 


このレポートをブックマークする


著者について

Stacy Short

Connect with author:


, IBM SAP Global Partnership Executive


Darriel Dawne

Connect with author:


, Vice President, Sustainability Marketing & Solutions, SAP


Anthony Marshall

Connect with author:


, Senior Research Director, Thought Leadership, IBM Institute for Business Value


Steven Peterson

Connect with author:


, Global Thought Leader, IBM Institute for Business Value

発行日 2023年4月20日

その他のおすすめ