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黒人女性リーダーの登用促進に向けて必要なこととは?

今こそ企業は、黒人女性をスポンサーシップ、スキル開発、そして反人種差別のアクションによって支援し、心理的安全性を実現すべきです

「所属する」、「居場所をもつ」こととは何を意味するのでしょうか?

もちろん、まず受け入れ、快適さ、信頼感といったことが頭に浮かぶと思いますが、それらは入り口にすぎません。 本当の意味で「所属する」ためには、個人が「ありのままの自分」であることを自由に選択できなければなりません。当事者に対して、グループ内の他の人が公平性と平等性を持って接したり、処遇したりすることは当然ですが、 問題は困難を伴わずにそうしたニーズが実現できるかどうかです。

ただ、自分の属性の存在を想定せずに設計されたシステムの中で生活したり、仕事をしたりしているときに、その集団に所属していると感じることは困難です。 黒人女性はこのことをあまりにもよく理解しています。

黒人女性は取り残されています(誰一人取り残さない社会が目指されている今においても)

USA トゥデイの分析によって、ジョージ・フロイドが殺害されてから 1 年以上が経った時点においても、企業の変革のための公約が掲げられ、人種に対する深刻な不平等が、国内最大かつ最も価値の高い企業のあらゆるレベルで続いており、特に女性に対して大きな格差が生じていることが明らかとなりました。

黒人女性の 84% は女性に対する差別が存在すると考えています。
しかし、白人女性でそのように感じているのは 64% だけです。

人種と性別という2つの属性が交わる中で、両方のアイデンティティーがしばしば見えなくなる、とはどういう意味でしょうか?

黒人女性には、輝かしくも複雑な物語があります。 しかし、彼女たちは時に、人生を形成した経験を置き去りにして、白人が多い場所でより広く受け入れられるような人物像に適応しようとします。

黒人女性は、職場、特に企業の環境において、低賃金、過小評価、脆弱な支援、および孤独を感じています。 また、黒人女性は「辞めたいのに辞められない」メンタリティー(モチベーションの低下)に陥っています。「 辞めたいのに辞められない」という現象は、他のポジションが応募可能になるのを待っている間に、従業員が離職し、生産性が低下する現象です。 職場では、「辞めたいのに辞められない」という現象は不幸なことです。しかし回避可能な現象でもあります。
 

3人に1人の黒人女性は、一般の人々よりも職業上の課題を克服するために必要な力が与えられず、サポートも受けられていないと感じています。

LeanInの 2020 年のレポート「アメリカ企業における黒人女性の現状(The State of Black Women in Corporate America)」によると、100人の男性がマネージャーに昇進するごとに、黒人女性は 58 人しか昇進していません。

企業は黒人女性の雇用と昇進から多くの利益を得ることができます。 タレント・イノベーション・センター (Center for Talent Innovation) の調査によると、彼女らが直面する障壁にもかかわらず、黒人女性は白人女性よりも、エグゼクティブ・リーダーシップの役割を追求することに関心を持っている可能性がかなり高いことがわかりました。 また、白人女性の同僚よりも、明確な長期的なキャリア目標を持つ可能性が高くなります。 成功への主なモチベーションは、組織内の他者に力を与えることです。

しかし、黒人女性は見られ、聞かれ、評価され、認められなければなりません。 今こそ、組織は、黒人女性が率先して成長できるようにするイニシアチブを策定しなければなりません。

多様性の尊重とインクルージョンの拡大

多くのリーダーは、変化が不可欠であると考えています。しかし黒人女性の公平性を確立するために何を変える必要があるかを正確に理解している人ははるかに少ないのです。

このことは、黒人女性のキャリアの見通しにとってどのような意味を持つでしょうか? 組織はどのようにして競争条件を平等にすることができるでしょうか? 従業員における黒人女性に特有な経験と、彼女らの障壁となっている課題を理解するために、 IBM Institute for Business Value (IBV) は、2020年8月と2021年1月に、750人を超える黒人女性を含む約7,000人にインタビューしました。

Gen Z の黒人女性の 82% は、採用、雇用、昇進などの人事上の意思決定に AI ベースのテクノロジーを使用すると、より多様な職場につながる可能性があると述べています。

IBM の調査結果により、継続的な問題が定量化されました。 調査によって、黒人女性の半数以上が雇用主が黒人に対して差別していると感じており、4 人に 1 人は雇用主が女性に対して差別していると考えていることが判明しました。 黒人女性の 84% は女性に対する差別が存在すると考えていますが、白人女性では 64% だけがそのように感じています。

また、3 人に 1 人近くの黒人女性が、白人女性のわずか 7% に対して、一般の女性よりも職業上の課題を克服する力が低く、サポートされていないと感じていることが判明しました。

メンタリングのギャップ:若い黒人女性は、前の世代の女性よりも、正式なメンタリングから得られる恩恵がはるかに少ない

 

信頼から始めよう

インクルーシブな組織の構築は文化的な活動です。そのためには、異なる経験や期待に関する対話が必要であり、権力や特権を持つ人々が学び、変わろうとする意志が必要です。おそらく最も重要なことは、信頼が必要であるということです。マッキンゼーの調査により、民間企業で働く黒人の従業員は、同じ会社で働く白人の従業員に比べ、昇進が公平であると考える割合が41%も低いことがわかっています。

信頼は時間とともにしか生まれません。それは、黒人女性が疎外感を感じることなく、あるいは敵対的な職場環境を生み出すマイクロ・アグレッション(微細な侮辱や屈辱)に耐えることなく、自分自身をありのままに表現することができると伝える日々の生活体験から生まれます。

公平性の推進に関して明確な優先順位を設定し、その目標に向けた進捗状況を透明性をもって追跡することは、組織が信頼を構築するための強固な基盤を築くのに役立ちます。また、組織の方針とプログラムは、インクルージョンの基準を満たさなければなりませんが、5年前に十分であったものではもはや十分ではありません。最も簡単に実行できそうなことではなく、黒人女性の生活に最も大きな影響を与える仕事を特定し、それに投資することが、彼女たちが自分の居場所だと感じられる職場を作るために必要なことなのです。

おそらく最も重要なことは、リーダーたちは黒人女性をこうした会話に参加させ、彼女たちが受けたいと思うだけの信頼を与えるようにすることです。これは、黒人女性に意思決定の権限を与える機会を積極的に探し、その権限をうまく行使できるよう信頼することを意味します。

しかし、帰属文化の創造はトップダウンの活動であってはなりません。黒人女性が組織の中に取り込まれ、尊重され、平等に昇進するためには、黒人以外の人々も学び、変化する機会を受け入れる必要があります。そして企業には、没入型の反人種主義トレーニングから、異なる背景を持つ人々が互いに知り合うための社交イベントまで、あらゆるものを使ってその学習を促進する機会があります。

ニクソン=サインティルは言いました。「そして、その背景や民族性に関係なく、すべての人を巻き込まなければならないのです」。
 

企業はどのようにして「所属の文化」にコミットし、サポートの基盤を構築し、労働力の中で黒人女性が直面しているシステム上の不平等を解消できるでしょうか?具体的なアクションガイドをご紹介します。
 

アクションガイド

理解する:黒人女性が直面する特有の課題を理解することは、彼女たちを阻む障壁を取り除くための第一歩です。
行動を起こす:人事方針や慣行、有意義なエンゲージメント活動、戦略的な能力開発、測定可能な昇進プログラムを通じて行動を起こすことが重要です。

企業が実施することができる具体的な施策の一部をご紹介します。
 

反人種主義的人事方針を策定する
 

  • 人種と性別による役職の公平性監査を実施し、不公平があれば是正し、結果を公表することにより、賃金格差に対処する。
  • パートタイムであっても、健康保険や有給休暇などの福利厚生を全従業員に拡大する。
  • 有色人種、特に第一線で働く人々に門戸を開く昇進慣行を採用する。


黒人女性に経験を共有する場を与える
 

  • 黒人女性のための役員職を設ける。
  • 黒人女性が苦情を提出できるプロセスを確保し、苦情を処理するチームが適切な反人種主義トレーニングを受ける。
  • 黒人女性の生活や日常業務に影響を与える決定をする際には、積極的に黒人女性の意見を求める。


文化を変革する
 

  • 黒人女性が事業全体でより公平に代表されるような多様な労働力の構築に投資する。
  • 黒人以外の従業員が、どのような行動を変える必要があるのか、どのようにすればより良い味方になれるのかを理解できるような反人種主義的な研修を開催する。
  • 尊敬、受容、包摂の模範を幹部レベルで示し、これらの価値観を会社全体に浸透させる。


目標を設定し、進捗を測定する
 

  • 黒人女性が多様な採用イニシアチブから取り残されていないことを確認するために、人種と性別を合わせた代表を測定する。
  • メンターシップ、スポンサーシップ、その他の専門能力開発の機会に関する目標を設定し、黒人女性の昇進を支援する。
  • 結果を共有し、多様性目標を達成したリーダーに報いる。

 

さらなる詳細なデータや事例は、このレポート全体(英語)をダウンロードしてご確認ください。

 


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著者について

Cindy Anderson

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, Global Executive for Engagement and Eminence, IBM Institute for Business Value


Obed Louissaint

Connect with author:


, Senior Vice President, Transformation and Culture, IBM


Brandi Boatner

Connect with author:


, Manager, Digital & Advocacy Communications, IBM CHQ

発行日 2021年8月2日

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