70年近い歴史を持つ茨城県厚生農業協同組合連合会 総合病院 土浦協同病院(茨城県土浦市)は2016年3月に新築移転し、新しいスタートを切りました。これに伴い、ITシステムも刷新されました。以前の病院情報システム「WITH」から、新病院情報システム「WITH+」へ。最新の電子カルテやデータウェアハウスを備えた先端のシステムです。また、iPhoneを導入して、看護の質の向上なども目指しています。IT活用の先進病院、総合病院 土浦協同病院の取り組みに迫ります。

「WITH」から「WITH+」へ。先端を行く病院情報システム

藤原 秀臣の写真
茨城県厚生農業協同組合連合会
総合病院 土浦協同病院
名誉院長
藤原 秀臣 氏
1948年の設立以来、総合病院 土浦協同病院は70年近い歴史を通じ、地域との信頼関係をベースに発展を続けてきました。2016年、その歴史は大きな一歩を刻みました。同年3月、以前の場所から6キロほど離れた高台への新築移転が完了。先端の設備を備えた病床800床の総合病院として、新しい時代に向けたスタートを切ったのです。新築移転プロジェクトをリードしたのが、現在は名誉院長を務める藤原秀臣氏です。

「今から10年以上前、院長に就任したときの建物は40年ほど使い続けたもので老朽化が目立っていました。そこで、就任早々に『10年後に新病院をつくる』と宣言。10年後に、着工にこぎつけ、今年の春から新たな拠点での医療活動が始まりました」

総合病院 土浦協同病院は以前から、IT活用の先進病院として知られています。藤原氏は「医療において情報は極めて重要。2003年には、当時全国的に見ても最先端といえる病院情報システム『WITH』を構築しました」と語ります。WITHは今回の移転を機に、新病院情報システム「WITH+」に生まれ変わりました。WITHは電子カルテ基盤やオーダリングシステム(検査や処方などに関する医師の指示を看護師や臨床検査技師などに伝える仕組み)を中心とした仕組み。これに対して、WITH+では守備範囲が大きく拡大。データ分析やモバイル、クラウドなどの技術も搭載して、より広範な業務をサポートするものに進化しました。

酒井 義法の写真
茨城県厚生農業協同組合連合会
総合病院 土浦協同病院
副院長・情報システム企画委員長
酒井 義法 氏
2003年に構築されたWITH、2016年に動き始めたWITH+。両方においてITパートナーとして選ばれたのが日本IBMです。情報システム企画委員長の酒井義法氏は、「移転をきっかけに、10年以上使った電子カルテなどの刷新が決まりました。そして、データの2次利用などの将来展開も視野に入れて、WITH+の構築プロジェクトがスタートしました。日本IBMにはWITHのときから参画してもらっていることもあり、WITH+への移行はスムーズでした」と、話します。WITH+のときには再度コンペを実施。候補となった3社のシステムの中から性能や機能などを多角的に評価した上で、日本IBMのものを選定したそうです。移行プロジェクトは2015年1月ごろに始まり、1年弱ほどの期間で完了しました。

365日×24時間のフル稼働に耐える信頼性と可用性

日本IBMはWITH+の主要な構成要素を提供しています。電子カルテを中心とした統合医療情報システム「IBM CIS+ソリューション」、多種多様なデータを格納する医療用統合型データウェアハウス「IBM MD-View」、データ分析や予測分析などを担う「IBM Cognos」と「SPSS」などです。システム全体の構築を支援するインテグレーションパートナーも、日本IBMが務めました。ただし、MD-ViewはWITHとWITH+の間、2014年に導入されています。

これらのIBMソリューションを選定した理由として、酒井氏はいくつかのポイントを挙げています。「まず、信頼性や可用性です。救急医療を担う病院として、365日×24時間フル稼働できるシステムでなければなりません。あらゆる業務で電子カルテをはじめとするシステムを使うので、これが止まれば医療も止まってしまう恐れがあります。WITH+ではシステム全体を停止させないことを目標に、信頼できる構成要素を選ぶことにも注意しました」

また、自由度という観点もあります。「Windows端末だけでなく、iPhoneなどiOS対応の端末からもWITH+が利用できます。このことが、システム全体の自由度を高めています」(酒井氏)加えて、WITH+ではデータ分析も重要なテーマと位置付けられました。藤原氏は次のように考えています。

「医療データの活用には大きな可能性があります。例えば臨床の指標を決めてそれをウォッチすることで、医療の質や効率の現状や改善度合いなどを把握できます。これを共有することで、病院一体で改善活動に取り組めます。また、経営分析という視点もあります。例えば、患者の分布と医療リソースの分布を重ね合わせれば、どの地域でどのような施策を講じるべきかが見えてくるはずです。さらに、研究面でのデータ活用にも期待しています」

船越 尚哉の写真
茨城県厚生農業協同組合連合会
総合病院 土浦協同病院
情報管理室長
船越 尚哉 氏
医療データの活用のしやすさも、IBMのソリューションを選んだ理由の1つです。この点について、MD-Viewが大きな役割を担います。MD-Viewが必要とされた背景について、情報管理室長の船越尚哉氏はこう説明します。「2003年のWITH導入後、データの集計や分析を行うときは、WITHの電子カルテシステムに直接アクセスしていました。当初はスムーズにデータをやり取りできたのですが、扱うデータ量が膨大になるにつれて、かなりアクセス時間がかかるようになりました。そこで、データの蓄積・2次利用のためのインフラを構築しようということになりました」

こうして、2014年9月、データ基盤としてのMD Viewが動き始めました。病院の移転の際には、このシステムを新病院に運んで他のシステムと連結しました。データの2次利用については後述します。

iPhoneで看護現場が変わった。ベッドサイドでの時間も増加

iPhoneは医療の現場に大きなインパクトを与えています。「若い人たちは、日常的にスマートフォンを使いこなしています。ユーザーが慣れているかどうかは、医療現場への導入を考える上で非常に重要です。iPhoneは軽くて多機能。医療においても、こういうデバイスを使う時代が来たと思っています」と藤原氏は言います。
WITHのころには、院内の内線通話にPHS端末が用いられていました。

新病院では院内にWi-Fi環境を整備した上で、iPhoneを内線端末、ナースコール呼び出し端末、院内グループウェア(メール・スケジュール・会議室予約・掲示板・等)、として採用。多様な職種の職員に配布されています。一方、看護師は内線機能だけでなく、「CIS+モバイル」と呼ばれる簡易版電子カルテをiPhoneで使っています。看護師に導入されたiPhoneの台数は、看護師が最も多く働いている昼間の人数分。ユーザー専用ということではありませんが、1人に1台を割り当てられます。以前は看護用の端末としてPDAが使われていましたが、iPhoneへの切り替えは看護現場から歓迎されているようです。

「以前のPDAはiPhoneよりも二回りほど大きく、持ち運びしづらいサイズでした。いまのiPhoneは小さい上に、計算やライトなどの機能も持っています。以前はPDAとは別に電卓を携帯したり、夜中には懐中電灯を持ち歩くことも多かったので、とても便利になりました」と語るのは、看護副部長の宮本佳代子氏です。電卓は看護師の必需品です。例えば、点滴の落ちる速度などは医師によって指示されます。その速度設定の際などに、しばしば電卓が使われています。多様な機能を備えた汎用デバイスのメリットといえるでしょう、写真撮影機能もその1つです。「傷の様子などを撮影して、電子カルテに保存します。こうした映像データは、記録として非常に重要です。視覚的に状況を理解しやすくなりますし、過去から現在までのプロセスも追いやすいです」と看護部長の猪瀬留美子氏は話します。

以前のPDAにも写真機能が搭載されていましたが、端末にデータが残るという問題があり、セキュリティポリシーによって利用が制限されていました。WITH+は端末をシンクライアント化できるので、iPhoneにデータを残さず使えます。携帯デバイスのポータビリティー向上やCIS+モバイルの活用などにより、医療の質と効率への好影響が期待されています。看護師長の羽生佳代子氏は次のようなケースについて語ります。

「場合によっては、医師から追加で新しい指示が入ることがあります。医師が電子カルテに指示を入力すると、その情報はすぐに看護師の持つiPhoneに表示されます。以前は気づくまでにやや時間がかかることもありましたが、今では追加指示を見逃す心配などもありません」iPhoneは医師と看護師をつなぐ情報共有基盤にもなっています。たとえば、病棟を巡回する医師が、ある患者を診察しながら「今朝の体温は?」と看護師に聞いたとしましょう。これまでは、看護師はスタッフステーションに戻って、記録を確かめる必要がありました。今では、iPhoneでCIS+モバイルを立ち上げ、その場で確認することができます。

「新しい病院に移転し、CIS+モバイルやiPhoneなどを活用し始めたことで、以前と比べて効率は上がっています。定量的な測定は行っていませんが、患者さんのベッドサイドに行く時間が増えたのではないかと感じています」(猪瀬氏)

猪瀬 留美子の写真

猪瀬 留美子の写真

茨城県厚生農業協同組合連合会
総合病院 土浦協同病院
看護部長
猪瀬 留美子 氏

宮本 佳代子の写真

宮本 佳代子の写真

茨城県厚生農業協同組合連合会
総合病院 土浦協同病院
看護副部長
宮本 佳代子 氏

羽生 佳代子の写真

羽生 佳代子の写真

茨城県厚生農業協同組合連合会
総合病院 土浦協同病院
看護師長
羽生 佳代子 氏

臨床と経営、研究面で効果を期待。本格的に始まった医療データ活用

最後に、WITH+による医療データの2次利用について。本格的なデータ活用はこれからという段階ですが、藤原氏が述べたように、臨床と経営、研究などの面で効果が見込まれています。既に、いくつかの具体的なテーマが俎上に上がっているようです。船越氏はこう説明します。

「例えば、最も効果的な栄養指導ができる患者さんの特定です。病名や検査値、投薬歴などのデータを分析することで、誰に対してどのような栄養指導を行うべきかというヒントを得られるのではないか。患者さんによっては、多数投与している薬の種類を減らせるかもしれません。このような取り組みは、条件によっては管理料の対象になります。経営面での効果も期待できるということです」

あるいは、輸血後の検査です。輸血の6カ月後には検査が必要ですが、人手を使って検査対象者を特定するのは手間がかかる上、抜け・漏れの可能性もあります。データを活用して自動的にリストアップすれば効率的かつ安全性も高まります。経営の観点では、紹介データの活用が考えられます。政府は医療機関相互の連携を重視しており、最近は地域のクリニックから病院への紹介、あるいは病院間の紹介などが推奨されています。

「エリアごとに紹介率の推移を見ることで、『この地域からの紹介率が減っている』といった状況を把握しやすくなります。すると、対策も見えてきます。地域のクリニックにあいさつ回りをして、課題はないか話を聞いたりすることもできるでしょう」(酒井氏)医療データの活用は、全国的に見ても始まったばかりです。フロンティアには大きな可能性が埋もれているはず。総合病院 土浦協同病院はいま、その可能性にチャレンジしています。

 

【お客様情報】
茨城県厚生農業協同組合連合会
総合病院 土浦協同病院

所在地:茨城県土浦市おおつ野四丁目1番1号
病床数:800床

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総合病院 土浦協同病院

所在地:茨城県土浦市おおつ野四丁目1番1号
病床数:800床


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